安井健悟
堺市で2018年、父親と弟を殺害したとして、殺人罪などに問われた無職足立朱美被告(48)=同市南区=の裁判員裁判で、父親の死因をめぐる中間論告・弁論が2日、大阪地裁であった。検察側はインスリン投与による低血糖脳症などと主張し、弁護側は末期がんで死亡したと反論。殺人事件か病死かで双方の主張が分かれた。
検察側は、足立被告が18年1月、同市中区の実家で父親の富夫さん(当時67)に多量のインスリンを投与したため、富夫さんは低血糖脳症を発症して寝たきりとなり、がんの適切な治療を受けられなくなったと指摘。「栄養の摂取が困難になり、誤嚥(ごえん)性肺炎を発症して衰弱し、死亡した」として、インスリンの投与に伴う殺人事件だと主張した。
一方、弁護側は中間弁論で、富夫さんの状態は改善していたとし、誤嚥性肺炎による衰弱を否定し「家族が栄養の減量を希望し、富夫さんが延命治療を望まなかった」とし、がんによる病死だと反論した。
これまでの公判では、富夫さんの死因をめぐり、5人の証人が出廷した。
富夫さんの主治医は、検察側の証人として証言。富夫さんが誤嚥性肺炎を発症しなければ「抗がん剤治療で2年以上の余命が期待できた」と述べ、インスリンの投与が死亡に影響した可能性を示唆した。
一方、富夫さんのカルテを確認した脳神経内科医は、弁護側の証人として「たんを無理やり吸引したことで、誤嚥性肺炎になったのではないか」と述べ、インスリンの投与と死亡の関連に疑問を投げかけた。
足立被告は、弟の聖光さん(当時40)を睡眠薬で眠らせ、トイレで練炭を燃やして一酸化炭素中毒で殺害したという殺人罪などにも問われた。次回公判からは、2人の死亡が足立被告の犯行によるものかが審理される。(安井健悟)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル